白い恋人のネーミングのヒミツ
発売40周年を迎えた北海道を代表する有名なお菓子のブランド、『白い恋人』。サクサクのクッキーとよく合うなめらかさのチョコレートがサンドされ、数多くのファンの心を今でも離しません。そんな白い恋人のネーミングの由来には、ちょっとしたエピソードがあります。
当初このお菓子にふさわしい雪や北海道を連想させるネーミングに、スタッフは頭を悩ませました。北国、冬将軍、ツンドラ、ブリザードといった、いろんな名前が提案されたそうです。そして創業者であり先代の社長である石水幸安氏が、雪の降り始めた外から帰ってきてふと口にした「白い恋人たちが降ってきたよ」という一言が決め手となり、白い恋人という名前に決定したのです。
『白い恋人たち』は、1968年に開催されたグルノーブル冬季オリンピックの記録映画の邦題です。そのテーマソングもヒットしたことから、石水氏もこのタイトルを記憶していたのだろうとのことです。
「白い恋人」はそれまでに例のないタイプのおしゃれなお菓子で、ロマンチックなネーミングも手伝って、瞬く間に人気商品となりました。発売した1976年に500万枚が売れ、知名度が高くなるにつれて売上も伸び、現在では年間販売数は2億枚に達しています。またチョコレートドリンクなど「白い恋人」シリーズの商品も展開しており、石屋製菓の中心を成す商品群の一つでもあります。
ちなみに土産品の単品売り上げでは、三重県の赤福餅に次いで全国2位とされ、業界紙が選んだ「20世紀を代表する土産品」では白い恋人が1位になりました。
ゴールドメダル賞を受賞後、類似商品が現れる
1986年にはスイス・モンドセレクションのゴールドメダルを受賞するなど、品質の点でも高く評価されていることから、さまざまな類似商品が出てきました。また「白い恋人」に似たネーミングも、続々と登場しました。
現社長の石水勲氏は「あまりにもまぎらわしいネーミングは、使用をとりやめていただきました。登録商標が製品を守ってくれます」という。同社はすべての製品について商標を登録しており、「白い恋人」については台湾、香港などでも登録済みです。北海道旅行の人気が高い東南アジアで、コピー商品を日本製として販売されるのを防ぐためなのです。
石屋製菓の製品は、北海道を誇りとし、北海道の旅情とともに楽しんでいただきたいとのことから、北海道での限定販売です。ところが最近、「白い恋人」が香港などで売られていることが判明しました。どうやら北海道で購入したものを、高い値段で売っているらしいのです。
「上代で買われるのには文句のつけようがなくて」と、石水社長は対応に苦慮しているヒット商品を巡る攻防は、終わりがないのでしょうか。
取材協力/石屋製菓株式会社
社長の皆さん!
今回の事例では、商標を活用したブランド戦略が大事なポイントです。
「白い恋人」のブランドを育成・保護することを背景に、国内だけでなく海外の商標までもおさえることでブランドが守られるのです。
【ここがポイント!】
(1)ブランド戦略に沿ったネーミングの考案
(2)商標登録を活用した保護戦略
(3)北海道限定販売とするブランド戦略
企業の商品ブランドは、短期間では決して構築できません。国内と海外両方できちんと商標を出願・取得し、各種プロモーションとシナジー効果をもたらすことで市場に浸透し、ブランドが確立されるのです。