LTEを使用するスマホ輸出禁止の可能性も
2016年10月、カナダのワイランという企業がソニーを対象に、中国の南京市中級人民法院で特許侵害訴訟を起こしました。特許侵害訴訟の対象になったのは、ソニーのスマホに使われている高速通信LTE技術です。800万元(約1億3300万円)の賠償と、侵害に該当する2種類の携帯電話の販売差止を請求したのです。
もしこの訴訟でソニーが敗訴すれば、翌年の夏にはLTEを使用するスマホの販売や輸出を禁じられる可能性がありました。
ご存知の通りソニーのようなグローバル企業は、中国も含めた全世界的な生産体制を構築しており、輸出禁止という事態は、ビジネスに深刻な影響が生じます。ソニーほどの大企業でなくとも、大きなダメージを受ける可能性もあります。
多国籍企業は本来、アメリカやヨーロッパで訴訟闘争を行うことには慣れているのですが、中国はまだ訴訟の歴史が浅く、また従来の判例通りの判断を当局が行うかどうかわからないため、リスクがあるのです。
気をつけるべきパテントロールの存在
今回ソニーを訴えたのは、パテントロールと呼ばれる企業です。パテントロールは、いろんな特許権を買い集め、訴訟することで発生する和解金を目的としています。日本ではあまり馴染みがないかも知れませんが、世界にはこういった権利ビジネスを展開する企業が多数あります。このワイラン社は、アップルやヒューレットパッカードなどをはじめ、米国だけで100社以上、約300件の特許侵害訴訟を起こしています。
しかも、ワイランは中国の対日感情が悪く作用する可能性がある南京という場所で訴えています。そういったあらゆるカードを使って、海外の企業は攻めてくるのです。
ただ一方で、中国の裁判所は南京が日本企業がビジネスを展開する上で、不利な場所だと思われたくないので、ソニーに有利な判決が出る可能性があるという予想もあります。いずれにしても、中国の裁判所がどんな係争案件でどういう判断を下したかという情報を把握しておくことは、海外ビジネスを展開する上で必須の条件になってきています。
社長の皆さん!
海外で事業を展開する時、自社の製品の知財権利関係は早めに確認し、手を打ちましょう。後手に回ると、ビジネス上の大きな機会損失を生む可能性があります。
【ここがポイント!】
和解金狙いのパテントロールに要注意
特に中国は、裁判所の判例トレンドがあるので、要注意です!
詳しいことは、お近くの弁理士に御相談下さい。