数兆円の資産をライセンス料で形成したジュローム・レメルソン
文化に影響を与えるほどの大発明は、社会を変えるだけでなく、個人の人生も変える力を持っています。発明を活用して事業を興すだけでなく、そのライセンス料収入だけで悠々と暮らす人もたくさんいるのです。
発明で巨額の富を形成した歴史的人物で有名なのは、ジュローム・レメルソンです。彼は、工業用ロボットやファックス、ビデオデッキといった日本のメーカーが非常に得意としている分野で、数多くの発明をしました。その特許の数は、605件にものぼるといわれています。
彼は企業に対して多額の特許ライセンス料を請求し、何兆円という巨万の資産を築きあげました。彼の特許戦略は、基本技術に関する古い特許出願を何回も補正するなどしてその技術内容を秘匿にしたまま有効性を担保したこと。これにより、基本技術のみならず派生技術までが社会に普及するのを待つことができました。そして、その技術が社会に充分に浸透したところで特許権を取得したのです。これにより、代替技術を持たない多くの企業が特許ライセンス料を支払うことになったのです。
電球を発明したトーマス・エジソンや電話機を発明したアレクサンダー・グラハム・ベル、交流電流やラジオを発明したニコラ・ステラなど、歴史的に偉大な発明家はたくさんいますが、それらをライセンス料にもっとも強く結びつけたのは、おそらくジェローム・レメルソンでしょう。
ちなみに彼は多額のライセンス料を請求することから、企業オーナーや特許弁護士から嫌われることも多かったようです。
身近な発明でライセンス料を得た日本の事例
高度な発明でなくても、日常生活の中から発明を生み出し、ライセンス料を獲得した日本人もいます。
・洗濯糸くず取り→3億円のライセンス料
自動洗濯機で洗濯すると、衣類に糸くずが付着するという難点がありました。それを解決したのが、主婦のKさんです。
網のようなものに浮き袋をつけて洗濯槽に入れることで、洗濯槽機内の水面に浮いた糸くずを自動的に回収できるようにしたのです。また、吸盤で自動洗濯機の壁に固定することも考え出したそうです。この商品は、年間400万個も売れるヒット商品になりました。
・汗取りパット→毎月1300万円のライセンス料
汗っかきの人にとっては朗報だった、「汗取りパット」。主婦のOさんが、汗っかきの脇の汗をどうにかしたいということで考えついたそうです。2004年、商品1点につき、売上の3%のライセンス料を支払ってもらう内容でメーカーと契約し、当時はライセンス料だけで毎月1300万円の収入を得ていたそうです。
・メモクリップ→契約金350万、実施料3.5%
発明家のSさんは、本棚にメモをテープで貼ることにより予定を管理していました。ある日、メモを剥がした際に本棚の化粧紙も破れてしまったことをきっかけに、メモを簡単に挟んだり外したりできるものを作成しようと考えたそうです。試行錯誤の末、辿り着いたのが、本体の内部に複数のゴムヒゲを設けたメモクリップ。ゴムヒゲの設置の仕方など、メモをしっかり保持し、抜き取りもスムーズとなるまで工夫を重ねて完成にこぎつけました。文具メーカーと契約し、45億円以上の売り上げがあるそうです。
このように、日常のちょっとした困ったことや、あったら便利なのにと思うことが、実は発明の元になったりします。そんな発明がお金になる可能性のある特許には、夢がありますね。