支援活動だより189_CTP
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知的財産支援活動だより2018年3月号(No.189) 23 域のモノづくりの競争力の高さを実感できたと共に、東海地域の中小企業の具体的な知財活動について知ることができた貴重な講演でありました。(3)第2部「ノリタケの歴史と要素技術・知的財産」について 前半では、株式会社ノリタケカンパニーリミテドの常勤監査役である青木哲史氏から「ノリタケの歴史」についての講演がありました。 1876年(明治9年)の貿易商社「森村組」の設立から現在に至るまでの会社の事業内容や、製造販売している陶磁器の歴史について紹介されました。製造販売当初のデザインはジャポニズムであったが、パリ万博やシカゴ万博の視察によって、デザインを洋風画に転換されました。陶磁器については、古くから特許出願や商標登録を行っている点も紹介されました。また、森村グループは、一業一社の精神であり、1876年の森村組を原点として、複数の企業において事業展開されています。 後半では、同社の執行役員 開発・技術本部長である永田滉氏から「ノリタケの事業別要素技術と将来に向けた展開」についての講演がありました。 ノリタケの原点は、食器事業であるものの、現在の同社の売上げに占める食器事業の割合は約9%であり、研削砥石などの工業機材事業や電子ペーストなどのセラミックマテリアル事業の売上げが大半を占めるものの、全ての事業の原点は食器事業である点が紹介されました。また、工業機材事業やセラミックマテリアル事業について、新たな製品を開発した際には併せて特許出願、商標登録出願などを行い、開発製品を知的財産権で保護することを行っている点が紹介されました。 1876年の森村組の設立から現在に至るまでの同社の陶磁器の歴史と、陶磁器から新たな事業を展開していく過程を聞くことができると共に、食器事業をはじめとする各事業についての知的財産戦略を聞くことができた大変貴重な講演でした。(4)第3部「豊田自動織機の歴史と知的財産戦略」について 第3部では、株式会社豊田自動織機の知的財産部長である伊東正樹氏から「豊田自動織機の歴史と知的財産戦略」についての講演がありました。 前半では、同社の源流事業である自動織機の変遷が、社祖豊田佐吉氏の物語ビデオを交えて紹介されました。豊田佐吉氏は織機を開発するごとに特許についても取得しており、同社における織機の第1号特許は明治24年5月14日に取得されました。また、G型自動織機の発明に関しては、50件を超える発明考案がなされています。このG型自動織機の特許権の外国メーカーへの譲渡益などを基に国産自動車の研究開発が開始され、1937年にトヨタ自動車工業が設立されました。 後半では、現在の同社における知財の取り組みが紹介されました。事業戦略と技術開発戦略と知財戦略が三位一体となって活動している点や、特許の出願状況や他社権利対応などの具体的な内容について紹介されました。 創業当時から発明を行うと特許出願を行い、「とにかくやってみよ」という豊田佐吉氏の言葉にしたがって、新たな事業を次々に展開する事業戦略は、多くの聴講者にとって大変参考になると感じました。 以上のように、東海地域のモノづくりを支える知財戦略についての第1部の講演、および、東海地域のオリジン企業の創業当時から現在に至るまでの歴史と、創業当時の事業をもとに、知的財産権で保護・活用しながら次々に他の事業を展開していく第2部および第3部の講演は、多くの聴講者にとって明日からの知財活動に大変参考になる内容であり、非常に有意義な講演でありました。日本弁理士会東海支部知的財産権制度推進委員会 副委員長 間瀬武志

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