創作的に表現された設計図は著作権に該当
しかし、製品のアイディアは著作権で保護されない!
株式会社スリーサークルプレスは、従業員数25名の中に多数の熟練工を有する企業です。金属加工に関する高度な技術力と納期への柔軟な対応から、発注先にとってなくてはならない存在で、日頃から納期に追われる日々が続いていました。しかし、Y社長は現状に満足することなく、新たな自社製品の開発と販売を目標として掲げてきました。
そして、製品開発には知的財産権の知識が必要だとの助言を受け、身近な著作権についてのセミナーを受講しました。そのセミナーで「著作権とは著作物に関する権利であり、著作物の例として創作的に表現された設計図が該当する」ということを学びました。
最近医療機器に関する課題を解決するアイディアを思いつき、念願の自社製品の開発に成功しました。そして、インターネットを通じて販売することに。Y社長は、今回の独自なアイディアに基づく自社製品の設計図が著作権で保護されるなら、当然に製品も保護されるであろうと考えました。その結果、特許権、実用新案権による保護対策は全くされませんでした。
初めての自社製品の販売でしたが市場のニーズにマッチした結果、全国から注文が殺到し、大ヒット商品となりました。しかし、販売を始めてから半年経過した後に、突然売り上げが減少する傾向が見られたのです。社員が調べたところ、東京のマネスルプレス株式会社から全く同じアイディアに基づく製品が販売されていることが判明しました。
早速Y社長は、弁護士にマネスルプレス株式会社への警告を依頼しようと、法律事務所を訪れました。しかし、そこには衝撃の結末が…。「残念ながら製品のアイディア自体は著作権では保護されませんので、マネスルプレス株式会社の製品販売を止めることはできません。」と告げられたのです。
また「マネスルプレス株式会社の製品が、御社の設計図を無断でコピーして、その設計図に基づいて製品の販売をしているなら、設計図をコピーしたことに関して、著作権の侵害であると主張することはできます」と付け加えました。しかしY所長は、設計図の管理については特に慎重を期し、無断持ち出しと、複製ができないようにしていたので、その可能性は限りなく低かったのです。